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/ お知らせ【特集】コンサート紹介!魅惑の初期バロック~1600年前後のイタリア音楽について
- お知らせ
2022/06/05
6月16日(木)のLunch Time コンサートを前に、笠原雅仁様からいただいた魅力的な解説を公開。
この機会に是非、1600年前後のイタリア音楽に触れて、時代を旅しませんか。
■笠原雅仁
初期バロック音楽とは文字通り、華麗で装飾的な音楽を特徴とする、バロック音楽時代の始まりの時期を指しますが、一言では言い切れないほど、ルネッサンス時代から複雑なスタイルの変遷を経て、その姿に至っています。「バロック」はポルトガル語の「バロッコ」(=歪んだ真珠)を由来としますが、ルネッサンス芸術のような均整のとれた美しさを追究する様式と比べて、わざと「不揃いさ」や「歪み」を構造に取り入れた趣向が、絵画や建築に見られるようになった時代の動きに対して言われたものであり、その言葉は音楽史にも同様に当てはめられるようになりました。
16世紀後半に、主にイタリアでは古代ギリシャ悲劇の復興運動が起こり、音楽を伴った演劇を上演するために多くの作曲家が作品を残していますが、これがオペラの前身につながりました。当時宮廷では、他の都市と互いの権力を誇示する目的もあって、豪華な舞台装置付きの音楽劇が競って上演されました。モンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」などが代表的な作品で、ソロや重唱の歌曲、それに様々な編成の器楽を用いた小曲が挿入されるなど、非常にヴァリエーション豊富で、登場人物の感情の動きや物語の展開が音楽に巧みに表現されています。これらの作品は、人間の劇的な情感を豊かに再現し、当時のオペラというジャンルが世に出はじめた頃の、言葉や和声を巧みに利用した表現音楽への作曲家の意欲を垣間見ることができます。
またこの時代は、器楽曲の目覚ましい発展における重要な時期でもあり、アマーティやストラディヴァリウスといった弦楽器製作の名手達は、この時代に優れた楽器を製作し、演奏家を影で支えた大きな存在でありました。作曲家、製作家、演奏家それぞれの技術は、相互作用の生み出すメリットによって、高度なレベルにまで磨き抜かれたのでした。
今回は初期バロックの名曲を集めたプログラムをご用意させて頂きました。楽器紹介や曲の解説なども挟みながらお楽しみ頂こうと思います。私たちの演奏を通して初期バロック音楽の魅力をたっぷりとお伝えできればと思います。